わたしの私の祖父は、愛知県山間部の炭焼き職人であった。写真は祖父が築いた炭窯である。ルーツをたどると、幕末期に祖父の祖先が岐阜からやってきて、この地域に黒炭の焼き方を伝えた炭焼き名人ということである。
そんな祖父の仕事を受け継ぐことなく、私は都会のサラリーマンになってしまったが、縁あって2年前に別の場所で1度だけ炭焼きをさせていただくことになった。
口の中から目の粘膜まで真っ黒になり、体中煤臭く、おまけに狭い窯の中の作業で腰を痛めてしまったが、昼夜通してじわじわ変化する排煙口からの煙の色や温度を確かめつつ、その合間に焚火を囲みながら仲間といろいろ語らったこと、「精錬」に入った時に炭材が窯の中でパチパチと鳴る澄んだ音色が、忘れられない。