建築の手帖

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chapter1 「新月伐採」

数年前の話になりますが、ずっと記憶に残っている話をしたいと思います。

ある製材工場社長の話です。その社長は若くして叔父から会社を継ぐよう命じられ、それからというものの毎日無我夢中に仕事に打ち込む生活でした。 製材業であるが故に、品質の良い丸太の確保には苦心していたそうです。特に冬が終わり、丸太が水分を吸い上げ始める春から初夏にかけての伐採は、 青カビ(Blue Stain)の危険性がとても高く、間違えば全く価値の無いものとなる恐れがあります。

伐採された丸太を買うのではなく、立木の状態でオークションは開かれるため、いつ伐採すれば良いのか、そこで彼の叔父は彼に対してこう言って聞かせたそうです。 「満月から下弦の月、そして新月に至るまでの期間に伐採をするんじゃ、その間は辺材(白太)が地下から水を吸い上げないから、青カビも発生しないんだ」と。 彼はその教えを今も忠実に守っています。 日本でも「新月伐採」といって、冬場の満月から新月に至る2週間のうちに伐採した木はカビが生えにくく、虫がつきにくい、収縮が少ないなどの特性があるそうです。
潮の満ち干きは月の引力によるところが大きいと聞きますが、木の生長にも関係しているとは驚きです。

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さらに感動したのは、親戚でもある先人の教えを今も大切に守っていること、つまり先人に対する尊敬の念を常に抱き、その教えを継承していく姿勢を熱く語る彼の態度です。 普段はクールな彼が、絵を描いて事細かに説明してくれたのです。 このことから、私たちと同じ地球上の生物である「木」を大切に扱ってきた先人たちの経験は、今を生きる私たちにとって欠かせないものなのです。ちなみに、彼の跡継ぎになるであろうご子息はまだ中学生(現在インターネットに夢中)、これから木と同じように人間としての「年輪」を重ね、やがて大人になり、この会社を継ぐことになったとき、代々伝わるこの教えを継承していくのでしょう。 木が人と人とを結びつける、一度でいいから木と話をしてみたいものです。

  

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